瑞穂の国の新米はうまい
きのうまで田んぼに立っていた稲がコンバインで刈り取られ、自家乾燥と精米で新米になる。その新米が届いた。茨城・水海道産のコシヒカリ。女房の甥の友人が米作農家らしい。
新米はさすがにうまい。梅干一個あればOKという感じである。瑞穂の国の秋を実感させてもらった。
横光利一が疎開していたときの作品「夜の靴」に新米が出てくる。新米と関係ないが、横光は一日四杯を食べる。家族三人は十杯ずつ、都合一日で一升と少しで足りる。疎開先の農家は同じ四人家族だが、四升でも足りぬ、という。
主人に一日四杯のことを話すと、「人じゃあないの」と言われ、じろじろ眺められる。
新米に代わった日、23歳になる農家の次男が二升を一人で食べた。
「二升米(まい)食うやつあるか」と主人は呶鳴りつけた。
ただ、筆者・横光の新米観は出てこない。その村では一俵五円だったそうで、そこに大阪の商人が来て、一俵千円で買ったと言うことを記録している。五円が千円という「驚倒すべき事件」で、米価は、うなぎのぼりにあがってゆく。
貴重な記録としても面白い横光文学である。