やはり、お尻は大きかった


    光背を置いて来られし御仏の
    背なにも祈る東人(あづまびと)たち
  奈良薬師寺の薬師如来の脇侍、日光・月光の両菩薩が聖観音菩薩とともに、東京国立博物館に到着、公開された。
  公開展の仕方が画期的である。両菩薩を上から眺め、下からも眺め、さらに光背をはずした後姿を見て拝むことができる。三体を東都まで運ぶと言う発想もすさまじいが、その銅像のすべてを東国で開帳する決心もすごい。奈良にいては見られない後姿だ。
  一首を詠み、背なを見上げて、大きなお尻だなあ、と思った。台座を入れて3m70cmの巨躯である。大きいのは当然だが、瞬間に、見上げて思った私がおかしいか。そんなことはあるまい。見下ろし、見上げ、ぐるっと回る。一体ずつ見上げると、天界の菩薩が、ふうっと、その天界まで吊り上げてくれるような妖しい感触に呆然とする。
  東人の狂乱を、半眼の菩薩は、どう見られるのか。初夏の昼下がり、やはり下から見上げるのがよし。満員だがイスも置かれている。空くこともあろう。 
  薬師寺を詠む、と言う催しがあり、その最優秀作品は、こうである。
    うすらひの消ゆるやよひの薬師寺の
    搭を離るるかすかな調べ