桜蕊降るやさしさを有難う


サクラが散り始めた。
束の間の記憶を人々に残して地上を白く染める。
そのあとに蘂(しべ)が、蘂だけの世界を見せる。
見上げてください。蘂だけのサクラの木々。
育て上げた花びらを送りだし、しばし、いこいのひととき。
そして自らも散っていく。

柏市から「冬草」と言う句誌を出していた高橋謙次郎さんに、

   桜蕊降るやさしさを有難う

という句がある。俳人は人の見過ごす世界を見せてくれた。