ドコマデモ キミノ トモダチ

 返本に行った分館で、ふと思い出して、浜田廣介の「泣いた赤おに」の絵本を読みたくなった。というより絵を見たくなった。一度借り出したことがある。ところが作者名も題名も思い出せない。
 「赤鬼と青鬼」の童話なんだけどなあ。
 
 若い二人の女性職員が走り回る。検索する。3月3日の、雛祭りの午後である。いささか恐縮のていである。出てきた、「これですよね」
 赤鬼も青鬼もいた。ありがとう。物忘れのひどくなった老人は頭を下げる。

 土曜日だから、両親の身の回りを見に娘が来ていた。「あら、うちの娘にも読んでやったわ」
 そこで声を出して読んでくれる。一気に朗読するにはちょっと長い。でも若い。童話の朗読を聴くのは初めてのような気がする。軍国少年には童話の世界などなかったよ。
 
 なんで浜田童話を借り出したのか。姿を見せなくなった青鬼をたずねた赤鬼は、残されている、長い手紙を読む。その末尾の一行が読みたかったからだ。
  ドコマデモ キミノ トモダチ  
 この一行がいい。二度も三度も読んだ赤鬼は、「戸に手をかけて、顔をおしつけ、しくしくと、なみだをながして泣きました。

 文中に、「ひるまなか」とある。「昼真中」だろう。初めてであった言葉だけれど、いい日本語だと思った。私が知らなかっただけかもしれないが、新発見したような気がした。