4字句を3字だけにして習字
もう何年か前のことになる。知人の石田彰子さんが、亡くなった叔母のところに、こういう習字の手本があったと、見せてくれた。千字文の習字の手本(楷書と隷書)である。最初に「天地玄」、2枚目に「黄宇宙」と3字が続く。しかし、千字文は、4字句の韻文のはず、なぜ3字でちょんぎってしまうのか。
千字文は久しく中国の児童の文字を学ぶ教科書だったという。違った文字千字の集まり。梁の周興嗣が武帝(在位502-549)の命令で書いた。一晩で書き上げ、周さんは頭が真っ白になったが、めきめき立身出世した。
忠実に1ページに4字は多い、3字程度でいいだろう。4字の韻文の勉強とは別問題である。そう考えれば一件落着である。児童の習字である。
文選読みとその意味を
ここまで千字文に迷い込んできたのだから、その読み方、文選読(もんぜんよみ)のお勉強である。冒頭の8字。
てんちのあめつちは くえんくわうとくろくきなり うちゅうのおぞらは こうくわうとおほいにおほきなり
天の色は黒く、地の色は黄色であり、
空間や時間は広大で、茫漠としている。
「古事記」の「天地の初め」の「国雅(わか)く浮ける脂(あぶら)の如し」を思い出した。
ついでに次の8字の意味をのぞく。
太陽や月は、満ちたり欠けたりし、
星座は、弦を強く張ったようにつらなっている。
参考 岩波文庫「千字文」