竜頭をつけ五穀豊穣を祈った


 南逆井では雷も鳴らず雨が降らない。菜園はパサパサになっている8月16日、柏駅から2キロほど離れた篠籠田(しこだ)の西光院で竜神への「雨乞いの舞」があるというので出かけた。その日は3粒でも雨が降るという言い伝えがあるそうで、それにあやかろうという参拝だったが、竜神は聞き届けてはくれなかった。強烈な西日を浴びながらの、元禄時代からの舞は、稽古を重ねたらしく、土俗の味を出していて見事だが、残念だった。

本堂前の一画に竹を立て、しめ縄を張った砂地で4時過ぎに始まった。サル、キツネ、ヒョットコなどの面をつけた12人のハダシの男衆が身ぶり手ぶり面白くはね回る。笛吹き10人、それに本番で登場する3匹の獅子が太鼓を抱えて控えており、それを打つ。

 サルやキツネは獅子3匹の露払いとなり、清めの塩を見物人に振りかける。汗をかいているところに塩の洗礼、いささか困る。

 やがて3匹獅子の登場となる。獅子といっても米作りに必要な水の確保のため竜神信仰があり、3匹とも竜頭をつけている。はなやかな花笠に守られて、舞はクライマックスに。

 酷暑の中の舞は、まず五穀豊穣への願いを込めたものだった。

 舞は真言宗・西光院の施餓鬼(せがき)の行事で、檀家の人々が祖先の霊を慰める日。 竣工したばかりの、まばゆいばかりの本堂から、塔婆を持って墓参りへ向かう。それを取り囲むように舞の見物人が右往左往する。

 バス停のそばには稲穂の垂れた水田があり、米作りが生業だったころの景色が残されていた。