かたくり&しばざくら
桜の花が咲くころ、逆井ではかたくりの可憐な花が人を集める。種子が地に落ちて8年もかかって花が咲くといい、地上に姿を見せるのは2ヶ月ばかりで、あとの10ヶ月は潜ったままだと聞けば、何かを避けるように下向きに咲く六花弁の淡い紫色に、人は愛惜の念さえ抱かされる。
市が昭和41年に、宇佐見さんの山地の北向き斜面の一部に囲いを作り、天然記念物に指定して保護を始め、それを市の花にした。宇佐見さん宅の話では、昭和30年代には、かなり咲いていて、盗掘がひどかったという。
かつては、鱗茎から良質の片栗粉をとった。いまはジャガイモの澱粉らしい。
かたくりの種子には、エライオゾームという脂肪酸がくっついていて、これが大好きのアリが巣に運ぶ。こうしてかたくりは移動し、群生するという。
もうひとつの市の花は、しばざくらである。かたくりは保護、しばざくらは普及、と市ではいう。こちらは北アメリカの原産。花詰草ともいい、桜に似た花が咲き、じゅうたんのように広がることからの命名らしい。
万葉集の大伴家持の歌に、
物部の八十乙女らが 汲みまがふ寺井の上 の堅香子の花
というのがある。堅香子(かたかご)というのがかたくりである。たくさんの少女たちが「入り乱れて水を汲んでいる」と解釈されている。