ふくろうの里親なりし日もありき
土南部小の裏から県道の白井・流山線に出る道の左側に「ふくろう屋敷」がある。右側は、いまの逆井には希少価値のあるたんぼである。「ふくろう屋敷」というのは日暮三郎さんという農家だが、ふくろうの生息している酒井根の下田の森自然公園の友の会が名付けたもので、桜の大木もある、明るい、ゆったりしたたたずまい。そこにふくろうのことなら何でも知っている奥さんのちえ子さんがいる。さしずめ「ふくろうおばさん」と呼ばせてもらおう。隣家との境にあるカシの木に、いまでもふくろうのつがいが住んでいて、ホーホーと鳴いている。
庭のけやきのうろ(ほこら)にいたミミヅクを追い出し、ふくろうが占拠したのは昭和51年の秋。翌年の春には2羽のヒナが誕生しているが、それだけなら地上からの見物人でしかなかった。ところが、そのうちの1羽が必ず落っこちる。毎年同じことが繰り返された。
そこで「ふくろうおばさん」の活躍が始まる。落ちたヒナを飛べるようになるまで、洗面所で育てたのである。ニワトリのささみを与えたり、ハツカネズミを埼玉から100匹も買い入れ、それで育てたという。
ふくろうの里親ということで新聞でも紹介された。60年には、農薬を控えた前の水田で平家ホタルも飛んだ。ふくろうの餌になる魚や蛙が豊富にいたのだ。いま、つがいがすんでいるが、ヒナがかえることはない。
ふくろうは、ギリシャ神話に登場する女神アテナの聖鳥で、知恵の象徴とされている。しかし、その生態から凶鳥のイメージが強い。源氏物語に「けしきある鳥のからごえになきたるも…」とある。異様な鳥が生気ない声で鳴いている、というのである。シエイクスピアは、マクベス夫人に「不吉な夜番、陰にこもった夜の挨拶」といわせている。
しかし、あんなかわいいものはないと、ふくろうおばさんはいうのである。
しかし、あんなかわいいものはないと、ふくろうおばさんはいうのである。