エビネ(海老根)の花
指呼の間に、エビネの自生地がある。
と言っても日当たりのよい小学校校内の裏の斜面だが、表示があるだけで、自生を見た者がいるのかどうか。学童が遊びまわっている。
そのエビネの花盛りの鉢植えを、花卉・樹木の愛好者からいただいた。地下茎が球を横に連ねたようで、エビの腹部の節に似ているから海老根ということなど想像もできない。
いまさら、この有名で300近い登録名のあると言うエビネを書くのも気が引ける。ただ眺めていれば、花の世界に入り込めるのだが…。
褐色の花の中に、白い唇弁(しんべん)は「3深裂」している。解説書の受け売りである。ついでに浩瀚な講談社版・日本大歳時記を見ると、化偸草と言う見出しになっている。「偸」とは盗むことである。何を、だれが、どう盗んだのかの記載はない。芥川龍之介に「偸盗」(ちうたう)と言う作品があるのを思い出した。ちゅうとうである。
講談社版には、「十個内外のハイカラな花を穂状につける」とある。ハイカラなどと言うのが懐かしい。そこから一句拝借する。
街にこぼす山の言葉やえびね売り(辺見京子)