蓮枯れ、風わたる手賀沼の涅槃
水の中の枯れた蓮、茎立ちの残姿。そこに風が吹き渡る。人の声は聞こえない。しかし、そこに画家は声明(しょうみょう)を聞き、やがて涅槃界(ねはんかい)さえ感得する。題して「渉風」。
銀座コンドー街のアートホール。作家集団・実在派第24回展。冒頭の絵は、やっと40代になった、若い内藤範子さんの手賀沼である。柏市松葉町で句誌「冬草」を主宰する高橋謙次郎さんと、句と絵のコーポレーション展を開かれたので知り合いとなり、実在派展に出かけた。
「渉風」を、腰をおろして眺める。蓮の花は残姿だけ。消えた。物寂しい絵、そこに声明が聞こえ、涅槃が…。彼女がにこやかに、これはコラージュだという。えっ!
彼女の指し示す絵の中に、般若心経の漢字が読み取れるのだ。ギャアテイ、ギャアテイ。吹き渡る風の中に、書き込まれた心経。判じ絵、いや宗教絵、いれてくれた茶を含み、ただただ絵に見入るだけだった。