森の緑を皆で残そう

 湧水池がある。鴨の番いが泳ぐ。それを上から抱きかかえるように森が広がっている。スタジイ、シロダモの巨木がそびえ、奥はかなり高くなっていて、畑地や住宅につながっている。風に揺れる竹林を抜ける板敷きの遊歩道がある。独歩の「嗚呼山林に自由存す/いかなればわれ山林をみすてし」というところ。1.1ヘクタールの別天地。

 しかし、見捨てられたわけではない。

 新松戸駅に近い松戸市幸谷に関さんという旧家がある。亡くなった先代の武夫さんの、森を大切にしようという意思を娘の美智子さんが継ぎ、「関さんの森を育む会」というボランティアの組織が協力し、地続きの湧水池のある森などの保全がはかってきた。代表は美智子さん。

 500メートルほど離れて「溜ノ上の森」という0.5ヘクタールの森もあり、ハリギリやヒサカキの奥にタケノコが顔を出している。

 3000坪という関さんの邸宅には、十一面観音や不動明王の石像があり、木蔵、味噌蔵、米蔵が並び、瓦屋根になったが住居は曲り屋。蔵には、ボランティアの人たちの使う農具などが置かれていて、屋敷林の樹木も手入れされている。6回の試行錯誤で出来たという竹炭をもらってきた。

 門前には梅林があり、梅を売って、活動の資金にもなっている。隣に、千葉ではこれ1本だけというケンボナシの老樹が辛うじて立つ。屋敷林からのぞくように、カヤとケヤキの大樹が、あたりを見下ろしている。