ロック「ホテル・カリフォルニア」

 Some dance to remember、some dance to forget
 この一行、どう訳しますか、と若い友人に言われた。ある人は思い出すためにダンスを踊り、ある人は忘れるためにダンスをする。意味はそんなところだけれど、詞句としてはもっと考えなくちゃあね。でも、ダンスとは、そういうものか。ダンスはしたことがない。
 これがロックバンド「イーグルス」との出会いだった。そしてたちまちロック開眼したと、同人雑誌の月報に書いた。
 とにかくレコード店に行き、ずらり並んだ中から2枚もののライブ盤を買ってきたのだった。30年前に大ヒットしたという「ホテル・カルフォルニア」の詞句だと知る。訳詞がついている。
 想い出のために踊る人々 忘れるために踊る人々
 それでいいじゃないか。黙って聞いていればいいじゃないか。黙って聞いていて気に入ったのである。つまり、ロック初体験者がロックに開眼したのである。以来、BGMになった。モーツァルトのピアノ協奏曲から、ユーミンの古い72-76年のベスト盤、そしてイーグルス。
 若いロック狂に義理を立てたわけではない。ただ、あちこちさまよっての開眼、そして出口のないホテル・カリフォルニアの退廃に閉じ込められている。