ユスラウメとクワの実
ユスラウメが実をつけた。ことしは「豊作」のようである。
ふるさとの庭のどこかにゆすらうめ (池内たけし)
田舎の家の庭に、ゆすらうめの木があった。よく食べた。種を吐き出しては口に運ぶ。子供にちょうどいい大きさなのだ。いま、万両の実を食べに来ていたヒヨドリの姿はない。
ユスラウメは庭木が多く、のんびり食べられたが、クワの実は桑畑に入って食う。養蚕県だったから桑畑ばかりだった。でも、桑畑に入ると怒られる。人目を避けての侵入である。クチビルが紫色に染まっていて、侵入したことは一目瞭然、ジイサンに怒られる。クモの子を散らすように逃げる。
山の畑の/桑の実を/小籠に摘んだは/まぼろしか (三木露風・大正10年)
桑畑は完全に消え、養蚕農家はゼロになった。庭のユスラウメの木も消え、住宅地になった。われらガキどもも四散してしまい、残った農家は孫の代になって、ビニールハウスばかりになった。