梅を漬けるのは貞女か


 歳時記を見ていたら、
  梅干して最後の貞女妻こそは 佐野まもる
 というのに出くわした。梅漬けるのは貞女の鑑、ということか。奥さんが「最後の貞女」と言う意味が分からない。うちでも、貞女といえるかどうかは問題だが、ことしも梅を漬けた。
 和歌山の南高梅が、箱積みされたスーパーで、10キロ7500円、その半分の5キロを買った。キロ780円、ほかのスーパーではキロ900円、値段にかなりの差がある。毎年のことである。
  実梅干し夜干し三日の星明り 小原菁々子
 わが貞女は、梅を洗い、塩を振り、石を乗せた。少しは手伝わなくてはならない。
 ガキの昔、塩をつけて青梅をガリガリかんだ。むしろに干された梅を失敬した。どこの家でも庭いっぱいのむしろだった。梅は陽光に照らされて暖かかった。梅干とは、しょっぱくてあったかいものである。そういう記憶がなつかしい。