地蔵さまがやってくる!
鈴虫が一年中鳴いている。ほんとに聞いてきたよ、と孫娘が真っ黄色の上に赤い字で、「幸福御守 京都鈴虫寺」と書かれたお守りをくれた。鈴虫寺には、わらじをはいた地蔵さまが立っておられる。京都の方を向き、お守りを両手に挟んで、願いこと(ひとつだけだよ)を言う。「自分の名前と住所を言わないと、地蔵さまがこられないから、忘れちゃあダメよ」
孫娘の言う通りに願いごとを申しあげ、財布に収めた。
一年中鳴いていると言う鈴虫。大きなガラスの箱?の中で跳ね回り鳴いている鈴虫。
「秋だけ鳴くはずの鈴虫が季節に関係なく一年中鳴き続けています。鈴虫の寿命はわずか百十日、鳴くのは最後の二十日程です。住職は鈴虫の妙音で開眼しました。特殊な飼育法を研究して毎日フ化させております」(パンフレットから)
妙徳山華厳寺、臨済宗の禅寺。ご本尊は大日如来。「願いことがかなったら、お礼をかねて来て頂ければ良いのですが…」とある。願いごとがかなったら、もちろん鈴虫を聞きに行きます。お地蔵さまは、私の住所氏名を、お聞きくださったでしょうか。不安な男は、再び願いごとと住所氏名を申しあげた。
梅雨はどこに行ったのか、真夏日のような夜である。