逆井のお盆
まだ迎え火も焚かない、明るいうちにお坊さんが来て棚経をあげてゆく。そういって逆井の人たちは笑顔を見せる。お坊さんの都合でそういう習慣になったらしい。翌14日の朝早く、ひと晩水に浸した野菜を細かく切り、これも水につけた米を混ぜ、墓地に持っていって、留守番の仏様にお供えする。迎えた仏様たちとはいっしょに家に戻る。みんなはだしだったという。家の上がり口には水を入れた盥をおき、足を洗った。
ガラガラ 真竹を4つ割にして十字に組み、その真中にマコモを四角に編む。逆井を歩くと、家の入り口や墓地で、左の写真のように花立とセットになったのが見られる。今では既製品が売られている。これにお供え物を上げる。逆井の近辺ではコシカケともいう。仏様が休まれるそうである。
16日は送り盆。17日には施餓鬼である。観音寺では、無縁仏や餓鬼を読経供養する。人々も集まり、そこで予約しておいた塔婆を受け取り、それぞれの墓地に供える。
高燈籠 新盆の家では8月1日、杉の木を切り出し、上の葉を少し残して横竹を渡し、木枠に紙を張った屋根をつけた高燈籠を立てた。仏壇と燈籠には縄が渡されていた。亡くなった人を導く目印だった。新盆の家を2軒ほどのぞかせてもらったが、高燈籠はなく、白提灯が縁側にぶら下がっていた。人々の記憶の中にだけ残っているようだった。
高燈籠を立てることはなくなったが、1日に親戚の人や近所の人を招き、馳走する習慣は続いている。