「ヨーロッパには雑草がない」


 写真は隣の芝生、ではなく隣の雑草である。6月に町会が草刈り代行をしたのに、もうこの始末である。小気味よく伸びる。ひとごとではなく、わが菜園でも少し油断すれば草ぼうぼうである。
 タイトルは、和辻哲郎の『風土 人間的考察』からの一文である。昔の本をひっぱりだした。第二章三つの類型(モンスーン、沙漠、牧場)の牧場ところ。雑草に旺盛な生活力を与えるものは、暑熱と湿気との結合だが、ヨーロッパの夏は乾燥期で、夏草・雑草を生育させない、草は主として冬草であり、牧草であるという。
 空気に湿気が少ないから、夏の早朝に牧場に出ても、草の露に足をぬらすことがない。わが菜園のお隣さんは、農具を置きっぱなしにする。農具は百姓のタマシイとはいわないけれど、ヨーロッパでは農具が露でさびることがないから置きっぱなしにするという。和辻風土論のまだ半ばである。

前の記事

酒のありがたさ

次の記事

これが三八式歩兵銃か