見逃した小室の獅子舞


 北総鉄道の小室駅近く、道沿いにいきなり朱の鳥居がある。急な石段を登ると、こじんまりした朱塗りの八幡神社の本殿が鎮座している。まだ午前中なのに薮蚊の出迎えである。
 雄獅子、中獅子の二匹が雌獅子の取り合いを乱舞するという千葉県の無形民俗文化財を見に来たのだが、どうやら夕刻の開演らしい。あきらめた。
 この鎮守様は、うっそうとした森の中で、稲荷様、駒形様、妙見様、道祖神、疱瘡神の祠がt点在していて、村人の信仰ぶりの長い歴史が流れているようである。それぞれに、一円玉や十円玉が上がっているのがふつうだが、上げられているのはすべてお米である。
 石段を登りきった脇石にもお米、神殿の狛犬にもお米が上げられていた。
 急な石段とは違い、神殿の奥を抜けると、ゆったりした村里に出る。屋根瓦の反り返った立派な家が目立つ。不思議な桃源郷のような…。お隣の本覚寺の境内を抜け、残暑厳しい俗世間に戻ってきた。

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これが三八式歩兵銃か