崩壊の種を秘めた夏の終り

 「この美しい日は、みずからの中に崩壊の種を秘めていた。もう、夏も終わりだった。太陽は雲ひとつない青空で燃えている。アスターとダリアは透明な光の中でこゆるぎもしない。」
 スイスのジュネーブ湖畔のホテルでの夏の終わりの描写である。
 NHKラジオ第2の「原書で読む」は「秋のホテル」(A・ブルックナー)。ちょうど日本とも季節が合って、夏の終わりの格調高いシーンになった。ブルックナーという女性作家の作品を読むのは初めてだが、小野寺健さんの解説、Anna Masseyの朗読ですすんでいる。
 冒頭の文は、小野寺さんの訳書(晶文社)から、こっそりお借りした。
 崩壊の種を秘めているのは、主人公の心象でもあるようだが、固い語彙に思える。四月は残酷な月、というエリオットの詩行をあるけれど。Masseyさんの朗読は活発で、異国の文学を緊張して聞かせてもらっている。どう展開するのか。
 日本なら、いよいよ秋本番の希望?に満ちた連想が始まるはずだが…。

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