世界で一冊だけの絵本
ご自分で絵を描き、言葉を入れ、製本する。世界に一つだけの絵本ができる。その絵本が数十冊も並べられていて壮観である。じっくり、ゆっくり観賞すれば、秋の日が傾くのを忘れる。
上野の東京都美術館の「東京展」(3日まで)の中の「絵本の部屋」。大小さまざま、紙だけでなく布を使った分厚いものもある。感触が柔らかい。絵本だから絵を楽しみ、付き添ったような童話の世界に導かれる。「ていねいに扱ってくださいよ」などと注意書きがなくても、おそるおそるめくっていく。(子どもたちが見たらどう反応するか)
スタジオジブリ「猫の恩返し」の監督・森田宏幸さんの絵本がある。「街で迷子のキリン」。硬い厚紙をはがすように読む、見る。猫とキリンの落差。高すぎて街に住めないキリン、「星を見ると、故郷のサバンナを思い出すんだよ」見上げる星空、詩情の漂う絵。
絵本の部屋に来て、入場者は自分の星空を見つける。
「東京展」は表現と発表の自由を求めて1975年に発足したという。顕彰故展ということで、人馬一体の室田豊四郎の馬が集合して見せてくれた。馬頭観音も描き込まれていた。