文学講座のあとは百花園
井伏鱒二の短編「へんろう宿」。早稲田大学名誉教授の紅野敏郎氏が読み上げる。バスを乗りすごして来た遍路岬の宿、おばあさんが三人、それに小学生の女子二人、これが宿の構成員。五人とも捨て子だという。
夢のような宿だが、人間同士の持つ習慣がちゃんと守られていて、庶民感情を的確に出す、暖かい作品だ。創作が七割だと思うが、巧みに庶民をキャッチした井伏らしい作品である。紅野氏の話は熱っぽい。
短編「鯉」も読み聞かせ、「厄除け詩集」にも触れる。
講座のタイトルは、「井伏鱒二と尾崎一雄」だが、尾崎一雄の「暢気眼鏡」などが紹介された。たぶん、聴取者は後日、井伏や尾崎の作品を読み解くだろう。
これは、東武百貨店の販売促進部?の「向島文化サロン・近代文学講座」(東武博物館ホール)、2カ月おきに紅野氏が話す。ただ抽選で外れることもある。
終わると2ヶ月ぶりの向島百花園へ。吾亦紅を眺め、牧水を偲んできた。