賽銭箱のなかみ
昔の田舎の話である。近所から赤飯をいただく。その入っていた重箱を返すとき、小さいマッチ箱を一個入れて返す。ご馳走様でした、と言いながら。
この間、隣町(市である)の農家のご夫婦の写真を撮ってあげた。そのお返しというのをいただいた。家に帰ってあけたら、葉書が五枚入っていた。これは昔のマッチ箱と同じではないかと思い、こういうのは、いい伝統、いい習慣だと感じ入った。心がこれで通じたのである。
中学校援助のボランティア・グループが、地区の歴史などをまとめてパンフレットを作るという。私には神社・お寺・生活というところを書くように言われた。
当地にも、大規模なお大師組合があり、85キロにも及ぶところを遍路が繰り出す。今は車利用だが、とにかく88ヶ所の移し札所を回る。賽銭を上げ、般若心経を唱和する。賽銭箱をしつらえる。そのなかみが写真である。
解説はやめた。マッチ箱一つ、葉書五枚の心は生きていると思った。