花盛りヨーロッパの村々


 静謐(せいひつ)=しずかで落ち着いていること、平穏無事。あまり使わない言葉だが、それを写真にして見たらどうか。それも花盛りのヨーロッパの村である。
 大島栄一郎・大島安輝子さんの「ヨーロッパ風景、静謐のスケッチ 花盛りの村々へ」(講談社出版サービスセンター刊 1.800円)には、人物のかげはほとんどない村々の一瞬がとらえられている。
 この静寂はなんだろう、と思う。小川の水は流れをやめ、森の木は揺れをやめ、花々さえただ静寂。読者は、茫漠としたラベンダーやヒマワリの畑の中に立たされる。空に浮く雲。
 好きな1枚をあげれば、花ではなく落葉。モントレゾ-ル、アンドロワ川のほとり、大樹の落葉が緑の雑草を覆い隠す。小川に浮くオフィーリアの幻想を誘う。
 巻末に大島氏の厳しい言葉がある。「村を構成するすべての要素が、住民たちによってよく手入れをされている」 日本の地方の風景は「混沌」だと指摘している。柏そごうの浅野書店で販売している。

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