いぬふぐり、君も外来種か
ある春遍路の一行が畑作地帯を抜けてゆく。人手不足か耕作放棄か、ホトケノザとイヌフグリが咲き乱れている。新しく参加したらしいおばさんが、
「イヌフグリって、犬の糞のことだってね」
という。声が大きい。春風に運ばれてくる。えっと思い、声をかける。
「犬のおちんちんのことですよ」
「あーらいやだ。そうなの」そうなんですよ。観察してくださいよ。
岩波新書に坪内稔典の「季語集」が出た。新書にしては珍しく300ページを越す。1ページに季語と、その解説400字、2句の例句がつく。青い星に見立てられるイヌフグリも出てくる。本来の名前は、オオイヌフグリ。在来種としてイヌフグリがあった。淡紅色の花をつけていたという。それが帰化種の時代となった。
タンポポでは帰化種と在来種探しが盛んだが、イヌフグリは青い星で定着してしまった。坪内さんの例句2句を紹介させていただこう。
こんこんと日は恙(つつが)なし犬ふぐり(森澄雄)
遠くからくるやすらぎにいぬふぐり(金田咲子)