書70、陶器2000


親子3人の家庭美術館

 誇張した言い方に白髪三千丈というのがあるが、「陶器二千」というは、誇張ではない。1階から2階まで、5つの展示室があり、そこをぎっしりと茶器や花器が埋め尽くしているのである。ひょっとよろけたらたいへんである。緊張せざるをえない。壁面を、これも隙間なく掛けられているのは楷書・草書・行書、そしてかな文字の書である。書は等身大の屏風であったり、額に飾られている。さらに日本画が色を添えている。

 陶器は、ご主人正仁さんの手作り、それも轆轤(ろくろ)を使わずに土練りをして仕上げ、底の糸切の部分をくっつける。すべて独学で習得された。

 茶器、花器、酒器が並ぶ。花器には日本画家の娘さん高木仁枝さんの絵が描かれている。また、書き込まれている文字は、書家で長年にわたって書道の教育に携わってきた奥さんの一枝さん(号は絢翠)の筆による。

 陶器の輝きを引き立てるように、書の力強さ、優しさが立ち込めるようである。「書は日本文化の伝統を引き継いでいる。書を教え伝えていくことが私の使命だと思っています」という思いが伝わってくる。

 つくばいを配し、茶室と陶芸釜を備えたたたずまいを、樹齢百年余のヤブツバキが見下ろしている。わびさびの異界に思えてくる。