厚さ3センチの同人雑誌


 発行は年1回だが、年々ページ数は増えるばかり。写真は2005年版で、600ページを越えた。多士済々の同人が、多彩な文才を見せる。6月末日が6年版の締め切りで頭が痛い。
 5年版の解読がMLを通じて延々と続いている。パソコンのMLというのは、絶好の討論の場になる。ついでに連歌グループがにぎやかに歌仙を巻く。
 「佳木斯(ジャムス)再び」という、大連から列車で20時間かかる地に着任している女性の日本語教師の体験記がある。日本語専攻学生との交流が楽しい。人柄がにじみ出る。取材記者によるルポでは読めない明暗がある。
 ホテルの十階の部屋で、一匹の蝿と出会う。その蝿とウマがあって付き合う。なかなか出てゆかないので蝿たたきを買ってくる。たたくつもりはないが、これを見れば、あわてて外に出てゆくだろう、と。マンスフィールドの短編「蝿」を思い出す。こちらはインク壷に落ちで死んでしまうのだが。
 同人雑誌は書く人と、読む人とが熟知の間柄にある。そして言い合いができれば、使命が完結する。そのために紳士淑女の水無月は多忙である。

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