褒めるだけの新聞の書評
新聞の書評は「今はもう全く褒めることしかできない」というのは、関西大学名誉教授の谷沢永一氏。「また、読者の方も変質しまして、そんなに批判のある本なら取り上げるなという投書もあったりして…」週間読書人の5月26日号である。
文芸春秋から、「紙つぶて 自作自注最終版」(B6版・5250円)を出した谷沢氏と早稲田大学名誉教授の紅野敏郎氏が「正史にはない『雑書』の魅力」という対談をしていて、新聞の書評についても語っている。
紅野氏が言う。「書評というものは、七割ぐらいは褒めて三割はビシッと言わないといけないのが、九割褒めて、やっと一割注文付けられるかどうかの状況に今はなっていますね」さらに、新聞の書評欄はひどい、週刊誌の本のコラムもダメ、と。
二人とも近代文学の研究者、本の収集が第一だと言う。それでも谷沢氏は言う。「こうなったら意地ですからね。集めるということは楽しみでもあるんですが、時に虚しい感じを持つこともありましてね。こんなことばっかやっててエエンかいナという迷いね(笑)」
新聞の書評は、両先生の言うとうりだろう。それでも新刊書ガイドとして読む一般読者も多いはずである。