紅野敏郎氏に花束と拍手


 5月の「向島文化サロン・近代文学講座」(東武博物館ホール)は、森鴎外と石川啄木について。ちょっと異色の組み合わせだった。鴎外の「舞姫」。ドイツ留学中の主人公とエリスとの恋、それを難ずる相沢某、話は鴎外の実の母親に及び、再婚の志げとの葛藤に及ぶ。モリシゲという笑いも用意されて、鴎外文学のウラが照らし出される。
 対比されたのが月給18円の啄木。日記や歌に秘められた幸徳秋水事件、ローマ字日記の内容など。東海の小島のカニだけでないことを教えられる。聴講者は、いつも一冊をひもどこうという気分になって帰ることになる。今回は「舞姫」であり「ローマ字日記」か。
 東武百貨店の文化事業による講座である。平成2年から始まって、91回目だそうである。2ヶ月に1回の講座だが、紅野敏郎氏も東武もよく続けられた。今回は紅野氏の紫綬褒章受賞で、東武から花束が贈られた。たまたま持参していたデジカメで、はるか彼方から撮ったのがこの一枚。
 おめでとうございます。ご苦労様でした。

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