万葉相聞歌の息づかい

 若い万葉学者の7月講座は、平群氏女郎(へぐりのうじのいらつめ)が、越中守となって赴任した大伴家持への相聞歌8首、彼女の歌はすんなり理解できるものが無く、意外に手ごわい。それに文法の解釈が入り混じるので、はるか昔に教わった、そして忘却している知識では歯が立たない。その中の一首。

  なかなかに死なば安けむ君が目を見ず久(ひさ)ならばすべなかるべし

 いきなり「なかなかに」でつまずく。なかなか難しいのである。中途半端というのが原義で、転じて、なまじっか、かえって、いっそのこと、という意味になるという。いっそのこと死んでしまえば心は安らかになるだろう。死という言葉は恋の歌にしか出てこないそうだ。
 あなたの目と、互いに見つめあう、というのは万葉らしい表現で、いいなあと思う。久しく見つめ合うことが出来なかったら、すべない=どうしようもない、どうしようもなくつらいことだろう! 
 このたどたどしい復習が、あと7首。梅雨の夜更けを、勉強するよりすべなかるべし、である。平群のイラツメさんの息づかいが感じられるまで。

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