はがゆいけれど、泣けてくる
NHKの教育テレビで山本有三の「路傍の石」を取り上げ、山本晋也監督が紙芝居調の解説をしていた。出演者は、それを見て・聞いて、読んでみたいと意思表示をしていた。
結構である。山本有三が復活すれば、丁稚奉公から飛び出した吾一少年の生き方が、いまの時代にどう受け入れられるかな。昭和13年に、片山明彦主演で田坂具隆が映画化した。それを見たような記憶がある。
昭和29年発行の筑摩書房の文学全集を引っ張り出し、山本有三集を見る。同氏は、まだご活躍中である。
解説の唐木順三氏がこういう。「山本有三はせまくて、窮屈で、一徹で、とても頑固だ。読んでゆくうちにはがゆくなる。もつとのびのびしてくれと注文したくなる。針ののどから天井をのぞくとはこのことだと言放つてもみる。それでゐて涙がボロボロ出て来る」
はがゆいけれど、読んでみたくなる。
そういう文化遺産、小説遺産は多種多彩である。