チキンラーメンは35円だった


 20世紀最大の発明の一つ、といわれるインスタントラーメンに縁のない生活を送ってきた。一、二度は試食したような気もするけれど、縁なき衆生だった。その発明者・安藤百福さんが亡くなった。いまさら試食もおかしいが、いくつか買ってきた。
 時あたかも大学入試センター試験、「ガンバレ!受験生」の激励が刷り込まれている。「これを食べて縁起担ぎ!」という。こんな具材で応援するとし、ナルトが五角形で合格とある。五角形に「ゴウカク」とルビがついている。いろいろついているけれど、ちょっと苦しい。
 作詞家の阿久悠さんがきょう20日の新聞に書いている。チキンラーメンが発売されたのは昭和33年、一食35円。「35円は結構高かった」と。33年に35円が高かったかどうか見当がつかないが、一つの記録である。
 さて、遅まき試食の味は結構である。ちじんだ細い麺を、するすると啜るとき、いささか涙ぐんだ。昭和27年、学生街にホームラン軒というラーメン屋があった、そのラーメンが30円、貧乏学生には高かった。33年の35円は、やっぱり高かったんだろう、阿久悠さん。