榾火詠む遠いむかしに戻りきて
戦争中の中学生、農繁期には農家に泊まりこんでの勤労奉仕。囲炉裏に榾火(ほたび)がはじけ、やかんの湯が沸いている。梅干が出され、たくわんをいただく。
視察に来た国語の老教師が、一茶の「おとろへや榾折りかねる膝頭」を教えてくれる。中学生の膝頭ははちきれんばかり、一茶など眼中になかった。戦後61年、元中学生も膝頭が痛い。
毎号、送っていただいている句誌『草の実』(代表・逸見真三)12月号が、11月の席題句「榾」23人分をまとめていて、俳人は今ではお目にかかれない生活習慣を詠むものだなあと感心し、素人は、ご苦労様と思った。榾火をサービスする宿もあるという。
高点句は、次の句。
大小の膝を照らして榾火かな
大人と子供か。まだお元気。元中学生の体験では、子どもは囲炉裏に近づかない。どこかの宿の、お上品な親子連れらしい。子どもには貴重な体験。
薬湯をかけし榾火のはじけたり
客人(まろうど)にしばし榾火の奢りかな
寒気の中を来てくれた客に、しばらくの間、榾火を強くして温まってもらおう。という解釈はだめですか。そうそう、有数のおかいこ県、榾は皮をむいた桑の枝?でした。なぜ皮がむいてあったかというと、むいた皮は供出して衣類の材料になったそうな。