厚物咲を見て、『厚物咲』を読む
写真は町内の友人の見事な厚物咲である。成長調整剤を使わないので丈が伸びたというが、手入れが大変だっただろう。そこで、中山義秀が昭和13年に芥川賞を受賞した『厚物咲』を思い出し、八木義徳が言う「東北という風土の持つ暗く重い力、孤独性、鬱屈した激情」に触れた。
藩校を飛び出した竹馬の友の二人。落魄した老人のすさまじい交流が描かれる。代書屋となって、つつましい生活を送る老人の目で、りんしょくや色欲にのめりこんでいる友人の異常性格ぶりを読ませる。
この老人の菊作りの特技は抜きん出ている。代書屋にはろくな苗しか呉れず、見せもしない。ところが、縊死してしまう。その下に転がっていたのが、三輪仕立ての鉢の菊。こういう描写がある。
「花芯をつつんで雲のように湧きたちまたは砕かれた波のように渦巻いている」 純白の厚物咲。代書屋はがくがくしながら、鉢を抱え込んで家に戻り発熱する。
代表作という『碑(いしぶみ)』も読まなくてはならない。