志(こころざし)衰えし日は

  志衰えし日はー、という詩を高橋英夫氏が探している。娘さんにインターネットで見つけてもらう。三好達治の詩であることが分かる。

   志(こころざし)おとろへし日は

   こころざしおとろへし日は
   いかにせましな
   手にふるき筆をとりもち
   あたらしき紙をくりのべ
   とほき日のうたのひとふし
   情感のうせしなきがら
   したためつかつは誦しつ
   かかる日のくるるまで

 詩人は、書道に専念する。そして二連では、
   甘からぬ酒をふふみつ
 志の衰えし日を過ごす。高橋氏は、出版社のPR誌をよみ、クラシック音楽を聴くらしい。マルチェッロ「オーボエ協奏曲」など。そして娘さんに言う。
   だんだん「志」が見えてきたよ。
 ひるがえって、こころざしの消えっぱなしの当方はいかにせん。高橋ー三好にならって、達治詩集をひもどき、モーツァルトのピアノ協奏曲に入り浸った。
 釈然とはしないけれど、その途中で脳溢血で倒れた友人夫妻から電話が来た。何と女房は、普通人とっまったく変らない話ぶりだった。膝が不自由だというが、奇跡の立ち直りに、当方のこころざしにも光が見えてきた。