患者は切ないものである

  蛍光眼底撮影という手術(保証人が必要)を受けた。看護婦さん(看護士という言い方はキライ)点滴の注射をする。これがうまくいかない。二度トライしたがだめ。患者は切ない。目をつぶっている。先生(女医)を呼んだらしい。これが一発で決まる。
  点滴が続き、目に麻酔がかけられ、相互の目の目付き(つまり左を見よ、左下を見よ、という)を変えて、何枚も撮影する。途中二回の休みを入れて撮影する。
  まだガキだった昔の田舎、電柱などに目だけを描いた張り紙が張られていた。それを見ると、それを描いたヤツのはやり目が、見たヤツに移る、というまじないだった。そんなことを思い出しながら先生を見る。もちろん、そこにいる先生は見えず、煌々たる光だけである。いつしか撮影は終わっていた。
  しばらく目が朦朧としている。浦島太郎のような、これも切ない思いの中にいた。十数枚の写真を見せられ、可も不可も無い判定を聞いた。帰るとき、看護婦さんが黙々と注射のあとに血止めを張ってくれた。

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平和展での、無言の発見