前橋なんて宇宙だよ

夏になると、毎日のように雷を伴う夕立が街を覆った。
  絲山秋子の「ラジ&ピース」(群像7月号)に、上記のような一文がある。彼女は高崎に移り住んだと言うことを読んだことがあるが、その移住が、高崎のFM局のアナウンサーの小説になったらしい。北関東の雷と夕立に気づいてくれたようである。前橋も出てくるし、たぶん赤城、妙義の山も出てきたようだ。
  このブログの筆者は群馬生まれである。しかし生地からは赤城も榛名も妙義、浅間の山々は全く見えない。隣は栃木県だし、埼玉県である。新田義貞が山頂で旗上げした235メートルの金山にさえぎられて、雄大な山国・群馬とは違っている。万葉集にも詠まれた、この山のためである。
  だから、闊達に群馬を描く、絲山の小説の主人公がうらやましい。高崎や前橋に夕立があっても生地では降らない。最高の真夏日を記録した熊谷に近い。
  親父の生地が前橋である。その前橋に行って気に入った主人公が、前橋に引っ越そうとする。友人になった女医が猛反対をする。なぜか。ブログの筆者には分からない。女医は言う。「前橋なんて宇宙だよ」と声を張り上げる。
  ブログの筆者は前橋が好きだ。萩原朔太郎がいる。でも、高崎に比べると宇宙なのか。前橋人に聞いてみたい。父の親戚の住む前橋が愛しくなる。

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