花野井大洞院に大壁画

洋画家の長縄えい子さんが描いた童話のような絵の世界が、16メートルの長い塀いっぱいに広がっている。海外でも個展を開くことの多い長縄さんは、奈良の薬師寺の散華の絵の中に子どもを遊ばせていたが、ここ花野井の大洞院の塀にもにぎやかに、天女と鬼と子どもたちの遊び声が聞こえていた。

年末にお披露目を兼ねて開眼供養が本堂で行われたが、あいにくの雨、木村誠治和尚が壁画を「遊戯(ゆげ)」とし、遊戯三昧というのはゆとりある生活をすることである、と説かれているうちに雨もやんだのでゆげの世界で天女様に挨拶した。

壁画

全長16メートルの塀に天女と遊ぶ子供たち

 

塀の写真

開眼供養に配られた絵葉書の中に長縄さんはこう書いている。

なにがいいっていろんなもん がいっしょくたになってごた ごたなかよくくらしているの が一番です あの世のことは しりませんがそんなとこだと いいなとねがいます

天女も子どもも赤鬼もゴタゴタ遊んでいる世界、「大人たちが子供の成長を、温かく見守ってゆける社会」を願って長縄さんは描いた。残る塀にも春が来たら描き続けるという。

本堂の賑わいをよそに、和尚さんが出てきて、文字部分に追加の筆を運んでいた。「アクリル絵の具は消えることがないんですよ」記者も一筆!と、一瞬とんでもない思いがよぎったが、子どもにカンバスを提供するのもいいのではないかなあ。

この大洞院、木村誠治・瞳夫妻が入居された昭和59年には、「本堂は波板トタンの壁と屋根でできていて、どうみても物置小屋だった」そうだが、いまは荘厳な落ち着きを見せていて、ご夫妻と檀家の方々の努力を垣間見た思いがした。

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