なんと遅々たる、なんとすばやい

  小倉百人一首競技かるたの、日本一をかけた第55期名人位戦を10日夕刻、テレビでじっくり見た。6時で放送時間切れ、翌日の新聞で西郷直樹さんが史上初の11連勝をしたことを知った。
 小倉百人一首であることは分かっている。朗々と読み上げられるのも百人一首であることは納得している。うろ覚えの百人一首を思い出している。優雅な遊びですね、などと思いながら見ている。
 しかし、これは競技であり、戦いであり、瞬発力が畳の上を飛ぶ。すさまじい。秒差の運動会である。百人一首を楽しむ、という世界とは全く異質の世界である。挑戦者を退け、11連勝というのもすごい。すばやい手の動きに比べ、読み上げる声の、なんと遅々たる。これを聞いているだけでいい。

  ながらへばまたこの頃やしのばれむ憂しと見し世ぞいまは恋しき