さくら散ってモンブラン


   久しぶりのモンブランだった。食べ残しのようで申しわけないが、モンブランは、皿に直立して出てきた高峰なのである。絞り出されたマロンクリームを帯状に織り、これが全山?を覆っている。どこから食べるか躊躇する。どこにフォークを入れても崩れそうな。
 半分ほどを食べたところで、太目の柱状の、真っ白い生クリームの本体と出会うことになる。写真はそのときである。下に埋められた甘露煮の栗の姿を判別されるだろうか。
 この味を説明するのは至難である。味覚に自信がない上に、コーヒーの香りがほどよくマッチして、呆然としているだけである。そして思う。口金から絞り出されたマロンクリームは一本ずつ、険峻を駆け登って直下の向こうのふもとに駆け下りたのか。あるいは初めから帯状に織られたものをかぶせたのか。
 ガラス越しに職人さんの姿は見えるけれど、そんな客がいるとは思いもしないだろう。新浦安の明海大学前の、PLUMEというケーキ店である。