宮本輝氏のオムレツが食べたい
宮本輝氏の「骸骨ビルの庭」(㊤㊦講談社)をやっと読了した。といっても2巻本を買ったわけではない。「群像」連載25冊を読んだ。休載が多かったから25冊は倍ぐらいになる。最終回の今年の2月号を終えた頃には上下本が発行された。
畑を耕すということ、馬糞を入れること、害虫を殺すことの一部始終を克明に読まされた。スープを作ること、オムレツを作ることなど、手を伸ばせば真似られるような料理法を教えられた。ダッチワイフの製作者の苦心と、その構造を克明に解説されった。京都にすばらしい七味唐辛子の製造販売元があることetc。
こう書くと、「骸骨ビルの庭」は誤解される。戦後に接収されていたビルに浮浪児が集まり、青年二人が育て上げる奇跡的な人間賛歌が描かれるのだ。浮浪児たちが小学校に入り、やがて社会人となる頃に、ビルの管理をめぐり入ってきた男の目が、その人間賛歌をまとめて見せてくれる。
上下本を買わなくては悪いような気になっている。宮本氏は、いつものように,さりげない文を綴る。それが続く。読者は引き込まれる。どこかへオムレツを食べに行きたくなる。