カツマーを目指すなかれ

  9月27日付の日本経済新聞の1面「春秋」は、「おれ実はカツマー」、「あ、私も」という書き出しで始まる。経済評論家・勝間和代さんの愛読者という。カツマー人気はすさまじいようだ。
 娘が、精神科医の香山リカさんの「しがみつかない生き方」(幻冬舎新書)を買ってきてくれた。父親が、まさかカツマー信者になる可能性を感じたわけでもあるまい。香山さんの本には、「ふつうの幸せを手に入れるための10のルール」という副題が付く。最終章が「勝間和代を目指さない」とあり、精神科医としての見解を聞かせてくれる。
 勝間さんのような殺到する依頼を「断る力」のある成功者もいる。詩人・金子光晴の一文が出てくる。「僕らの身辺に絶望者はこと欠かない。…生きてゆくファイトのなくなった人、そんな人はいっぱいころがっている。」いくら前向きに努力したところで、才能、環境、タイミングなどで成功者になれるわけではない。「ふつうにがんばって、しがみつかずに自分のペースで生きていけば」それなりに幸せを感じながら人生を送れる、と香山さんは「絶望者」を励ましてくれる。

前の記事

月見患者も寂しいんだ