いちかけ にかけ さんかけて

  あるグループの、真昼の忘年会である。宴会は最後のカラオケになっている。騒々しい音が満ち溢れ、熟練の歌詞があふれる。気持ちのいい昔の流行かもあれば、新しい、聞いたこともない曲も流れる。
 ふと、箸で茶碗を叩き、わらべ歌が喧騒の下をくぐって聞こえた。大正ヒトケタ生まれの長老が歌っている。唱和するのはゲストで、若いおばさんである。長老は長崎生まれ、幼時の日に覚えたのだろう。二人の唱和に参加する。当方は北関東の片田舎で聞き覚えたわらべ歌だ。
 なんとも懐かしい。カラオケの流行歌とは年季がちがう。
 若いおばさんは、どこでうたっていたのか。

セッセッセーの ヨイヨイヨイ
      いちかけ にかけ さんかけて
      しかけて ごかけて 橋をかけ
      橋の欄干 腰をかけ
      はるか向こうを ながむれば
      十七、八の ねえさんが
      片手に花もち 線香もち
      これこれ ねえさん どこへゆく
      わたしゃ 九州 鹿児島の
      西郷隆盛 むすめです
      明治10年 そのあした
      切腹なされた 父上さまの
      お墓まいりに まいります
      お墓の前で 手をあわせ
      なむあみだぶつと となえれば
      お墓の中から 火の玉が
      ふぅわり ふわりと
      ジャン、ケン、ポン!