豊かな人生儀礼

松戸市立博物館の「人生儀礼の世界」展を見る

宮参りの祝い着が展示されている。その前でおば様がふたり、しみじみと語り合っている。話を聞かせてもらおうと思ったが遠慮した。人は過去を持つ。過去の社会的慣習としての儀礼の記憶を積み重ねて生きている。その1ページを開き見ているのだろう。

和服

やはり人生は短いことを実感

人が生まれ、成人して結婚、やがて死を迎え、先祖となる。その一生の儀礼を昭和初期から30年代までに行われていた松戸地域の農村や町場で調査して来た人生儀礼が紹介されている。

I 出産と育児の儀礼 市川市手児奈霊堂の安産祈願、待道講、子安観音が紹介され、出産へ。産婆から助産婦に変わった時代の卒業証書と出産器具が展示される。誕生ー宮参り。オビアキ、オビヤアケなどと言い、男女の区別なく生後21目。女児は33日目のところも。初節句ー七五三などの祝い着の色彩がきれい。続きは早くもII 結婚の儀礼嫁入り道具を積んだオート三輪が登場。結婚式は祝言といい、農閑期に挙げるのが一般的だった。夫婦の盃に酒を注ぐのは、男の子のオチョウ(雄蝶)、女の子のメチョウ(雌蝶)だった。

金婚式も喜寿の祝いもなく、いきなりIII葬送の儀礼。実物大の六道さんが四人、棺桶を担いで出てきたのには驚き、心胆寒かりし。さらしの白い半てんと股引、白足袋にわらじばき、葬式のことをトムライ、ジャンボンと言ったころの復元。葬列を組んで野辺送り、土葬の時代。六道は家の並び順や組の中から選ばれ、墓穴を掘り、棺桶を運び埋める。

これで、この世から抜けて終わり
のはずだが、IV描かれたあの世を見せてくれる。地獄極楽図が広げられ、死者を裁断する閻魔大王の前に引き出される。十王像が並んでいる。そっと過ぎ去るのは悪い。手を合わせようか。誕生ー結婚ー葬送の儀礼を従順に通過してきたのに、あの世まで。博物館は厳しい。南無阿弥陀仏。ここまでたどり着くのに五七日(死後35日)かかる。

まだ、V人の一生があった。衣食住の意味を考える。白い着物、ぼた餅の役割、公の部屋で行う祝言や葬式など。地域をあげて行った。

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