背丈縮みしと素っ気なき妻

 若い看護士さんが、身長を測りましょう、という。患者が多くて増設されたクリニックで、台帳?を書き換えているらしい。
 「1メートル60…」と言っている。
冗談じゃない、俺は1.72はあるはずだ。その気配を察したか、「かかとを揃えて、後ろの所にくっつけてください」と言う。なるほど、姿勢もよくしなくちゃあならないな。
 不動の姿勢の結果、1.70と気の毒そうに言う。「やっぱり縮んだんだよ。女房にも言われた」看護士さんは安心したようだった。「ありがとう」
 礼を言っても仕方がないが、女房の言うことは本当かと思う。こういう短歌を作ったことがある。

  夏ズボン裾丈長しと気にすれば
  背丈縮みしと素っ気なき妻

 身長は伸びる、やがて縮む。だれも気がつかない。気がついたのは俺だけである(たぶん、きっと)。
 年齢と反比例するほどではないけれど、それが人間なのだろう。やむをえない。