「鬼おろし」でおろす「しもつかれ」

  ことしも栃木・茨城の郷土料理「しもつかれ」を栃木育ちの隣人が作ってくれた。鮭の頭が手に入らず、ちょっと味が違うのよ、といわれたが、2月の味を楽しませてもらった。初午の日に作る。節分の残り豆を使うのだが、一番の特徴は、ダイコンを竹で作った目の荒い「鬼おろし」でおろす。ニンジン、鮭の頭、酒粕などと煮込む。下野(しもつけ)の「しもつかれ」である。
 作家の立松和平さんが亡くなったときある夕刊の囲み記事で、宇都宮支局にいた記者が、若かった作家に聞いた話を紹介している。そこに「しもつかれ」が出てくる。
 鮭の頭と野菜の切りくずでつくる「しもつかれ」は、まさにボーダーにふさわしい郷土料理、と語ったと言う。野菜の切りくず、とはかわいそう。れっきとしたダイコン、ニンジンを使っているんです。記事を見た読者はそうか、と思うだろうし、「しもつかれ愛好者」はがっかりする。