菊のご紋章入りの箸ですぞ
母の日から、わが家では菊のご紋章入りの箸で食事することになった。娘が友人と皇居参観に行ってきた、そのお土産である。黄門さんの印籠を見せると、たいていが平伏するのはドラマの話であるが、箸をパッと見せてもかしこまる相手はいない。
娘が行ったのは、一般参観コースだそうで、桔梗門から入り、正月の参観日に日の丸の旗でうずまる宮殿東庭を通り、二重橋(正門鉄橋)を渡り、宮内省を一回りして帰ってきたそうである。途中に売店があるらしい。
近づき難い場所と言う気分のするところである。行ってみようかとも思う、複雑な思いがする世代である。黙って、漫談のように語る娘の参観体験を聞いていた。
戦時下の中学生時代、勤労奉仕で宿泊していた(授業などないのである)農家の主人が近衛兵で皇居を守る軍隊にいた。周囲1里でな、といつも語りだした。息子二人が出征していたが、皇室賛歌は堂々たるものがあった。陛下の赤子の軍国少年も熱心に聞いていた。
その主人が、娘の参観漫談を聞いたらなんというか。
時代が変わったのではなく、まったく違った世界になっているのである。