奔放自在な筆遣い


   牧水の話である。かな書きの書道の先生が、うちわに短歌を一首書いてくださった。猛暑たけなわの頃である。

  青草のなかにまじりて月見草ひともと咲くをあはれみてつむ

 そこで生誕百年記念特集号の「短歌」を探し出した。若山旅人選の百首選に出ていなかった。うちわの写真は小さくて分からないが、終句の「あはれみてつむ」が読めなかったのである。読めないはずである。
 「あはれミ帝つ无」と書かれているのである。
 筆は奔放である。万葉仮名も入ってくる。ミや帝が入り混じるのは楽しみのようである。万年筆で手紙を書くとき、奔放に自在に替え字を書き入れるのは楽しいような気がする。ただし相手に読みこなす「教養?」が必要なのではないかなあ。
 かな書きの先生にじっくり教わった。