柏市逆井の歌人
館山一子の歌
暗い心で居なければならないと思うその事が堪へられない
丈けだ血を吐いて寝る事なんか何でもない
短歌とは五七五七七だが、上の言葉も短歌だといわれると戸惑う。柏市逆井(土村逆井)に明治29年に生まれた館山一子の処女歌集「プロレタリア意識の下に」(昭和4年)のなかの一首。プロレタリア運動の盛んな時代の象徴的な歌集である。このあと一子は口語詩は迫力がないとし、定型短歌に戻っている。前後に結婚、離婚があったが、歌人としての活動が続けられている。
土小の「ふるさと資料館」にある館山一子と短歌の添削
昭和15年には、五島美代子、斉藤史、佐藤佐太郎、館山らの歌集「新風十人」が出て、当時の歌壇に一大旋風を巻き起こした。
幾片の白骨と化して戻り来し骨甕を人ら捧げ来たるも
戦時下にきわどいことを歌っている。昭和16年に第二歌集「彩」、26年に第三歌集「李花」を出し、戦後の歌を集めている。門弟が51年に逆井観音寺の境内に建立した歌碑(写真下)の歌は、この中の一首。
国境をはるかに越えて迫り来る波あり春の岸辺を洗ふ
一子自身が、「敗戦後どっと押し寄せてきた米・ソ等の海外思想に材をとる」と言っている。春の岸辺は、新生日本への期待。
山村の小さきわら家にこもりゐて背のびするわれか時の流れに
この間、郷里に戻り、22年に短歌結社「郷土」を創刊、充実した活動を始めている。34年に逆井小の校歌を作っている。
42年死去、71歳、寂光院一乗妙詠大姉。観音寺に眠る。