ふと、女房の実体を考える
六つのとき、さらわれ自転車に載せられ
そういう詩が出てくる。小説の主人公Kは、里子に出されていたが、乳母(おっか)は実家に返そうとしない。実家では学齢期を迎えた娘を強引にさらってくる。
実家には八人兄弟姉妹がいて、Kは五女である。
すでに単行本も出ているが、三木卓の長編『k』を『群像』2月号でやっと読み上げた。作者を振り回し続けたK、出会いから47年、その死までが書き込まれる。Kの辿った人生、Kと言う個性、同時に三木卓と言う人間。ほっと息をつぐ。
病魔に苦しめられるKを読むのは切ないが、ふと隣りにいる「わが女房」を眺めることになる。金婚式はとうに過ぎた。されど、その実体をどこまで知っているのか。
いや、Kは実話であろうが、そこまで思いをいたすのは面倒な話になる。