タナゴは楽し、寂し
↑ミヤコタナゴ。体長3-4センチ。 昭和49年に天然記念物に指定され釣ることはできない。イタセンバラとともに絶滅危惧種。
いつも行く理髪店に、大きめの水槽が二つあるが空っぽのときもある。客は、そこに淡水魚のタナゴが釣られてきて、跳ね回るように泳ぐはずである、と思っている。
理髪店の主人は1月3日、同業者と二人、霞ヶ浦南部の新利根川河口水門近くに行き、船宿の和舟を借り、百数十匹を釣り上げ、スポーツ紙の釣果欄をにぎわせた。
写真は、そのうちの数十匹で、豪華にひしめき、眺める客に活気をあたえている。梅がほころび、桜が咲く春を元気に泳ぎまわってほしいものである。
ミヤコタナゴは絶滅危惧 タイリクオオタナゴなど帰化種
静かに眺めていれば、タナゴ群もゆったりと泳いでいる。一歩近づき影を落とすと、たちまち右往左往の大混乱を呈する。それでも衝突して怪我をし、浮き上がる気配はみえない。
水槽の中は、いかがですか。
住みづらいかなあ。餌は市販品が一日一回、パラパラと降ってくるし…。釣られてきて、ここにいるのは、体長10センチもある大きなタイリクオオタナゴという中国からの帰化種らしい。
戦後、利根川水系にソウギョやハクレンなどが移入され、それに混じって繁殖、産卵された淡水真珠貝が琵琶湖に移入されると、鮎の放流とともに、全国各地の水系に広まったと言われる。小さな日本種のミヤコタナゴなど駆逐されている。
理髪店の主人は、船宿の和舟に乗って、岸から数メートル出し、3メートルほどの竿で、同じ長さの道糸をたらす。針と餌はタナゴ用だが、30センチもあるへら浮きを使う。
朝7時ごろから4時まで、無念無想の太公望である。日は差しているが、風は冷たい。